製作の手順

「筒描き染め」は下書きから完成まで、
一枚一枚に手間と時間をかけて丹念に仕上げます。

「筒描き染め」の手順

下書き → のり置き → 水引き → 乾燥(のりを乾かす) → 色引き→乾燥(色を乾かす) → 色止め → 水槽につけ時間をおく → のりを落とす → 乾燥(旗を乾かす) → 仕立て → 納品

下書き

水で消える特殊な「下書き墨」で、のりを付ける部分に下書きをします。

のり置き

のりは固さにより文様の描き具合が変わるため、気温や湿度に合わせて固さを調整します。和紙を重ね渋で固めた筒にのりを入れ、口金(くちがね)の先から絞り出しながら、下書きの上に沿ってのりをおきます。線の太さなどにより大小の口金を入れ替え、多彩な線をフリーハンドで描きます。

水引き

のりを置いたら生地をひっくり返して、裏から刷毛(はけ)で水を塗って湿らせます。のりと生地を密着させ、染料が入りやすくするための作業です。

乾燥

防染の役目を果たすよう、のりをしっかり乾かします。

色引き

指定された色を配合します。同じ配合でも天候などで色調が変わり、この作業も経験と熟練の技を必要とします。生地をキンバリ、伸子(しんし)という専用道具でしっかりと張り、色ムラができないよう正確に素早く、均一に刷毛で色を塗っていきます。

乾燥

色引きがムラにならないよう細心の注意を払い、天日干しで染料が乾くのを待ちます。
影になる部分ができないよう、天気予報を見ながら日程を組みます。

色止め

染料が乾いたら色止め液を刷毛で綿密に塗り、のりを落とす際に色落ちがないようにします。

水洗い

色止めが終わったら水槽に2時間ほどつけ、のりをふやかします。のりが残らないよう荒目の刷毛を使って、念入りに水で落とします。のりが置いてあった箇所が白く浮かび上がります。

乾燥

再び天日干しにします。

10仕立て

縫製して完成、納品です。

職人紹介

13代目

MATSUDA NARIKI

松田 成樹
昭和47年、12代目の長男として生まれる。
幼いころから祖父や父の仕事ぶりを見て、時々、簡単な作業を手伝っていた。
早くから継承者の自覚があり、大阪の大学を卒業すると、すぐにUターン。家業に入り、父に弟子入りして修業に励み、平成7年に13代目を継いだ。
「仕事は見て覚えなさい」という父の方針のもと、ようやく「自分でできるようになった」と思えたのは10年後。「いいものができた」と思えたのは、さらに10年後。
今日でも、まだまだ満足せず「もっとお客様のご希望に応える仕事を!」と意欲を高めている。
平成31年、鳥取県伝統工芸士認定。

14代目

MATSUDA ISSEI

松田 一晟
平成10年、13代目の長男として生まれる。
小学生の頃、特別授業の講師に招かれた父が染物について語り、家業を深く知る機会となった。この時、染物店を継ぐことを決心。小学校の卒業式に全校生徒の前で世襲を宣言した。
高校まで地元の米子市で暮らし、大阪の大学へ進学。卒業後、Uターンして令和2年に14代目を継ぐ。
やりがいを感じるのは、お客様に喜んでもらえた瞬間。手染めの素晴らしさを広める使命感を胸に、こつこつと腕を磨いている。
大学で外国文化を学んだ強みを生かし、「ゆくゆくは観光に来られた外国人の方々や、海外へ向けた訴求にも取り組みたい」と考えている。

MATSUDA MICHIKO

松田 美智子
1946年生まれ。
1968年、12代目松田廣海を婿として迎える。以来、簡単な作業の手伝いから始まり、のり置き、色引きなどの手伝い、縫製を行なっている。
「孫の14代目(松田一晟)は、とても素直で安心しています。」と微笑む。

瑞染堂店長

MATSUDA MIZUE

松田 瑞恵
米子市出身、昭和46年生まれ。
平成9年、13代目に嫁ぐ。
令和2年、松田染物店第2工房&ショップ『瑞染堂』の店長に就任。
多くの人に受け入れやすいファッションや小物などを通じて、染物の魅力を発信している。
アパレル業界で仕事をしていた経験を生かして、オーダーメイドなどの相談にも乗り、女性の目線に立ったきめ細やかなアドバイスが喜ばれている。
筒描き染めの鮮やかな色彩など、日本古来の染色を知るアパレル専門家として、名刺入れやエコバックなどもデザイン。伝統的でありながら、モダンで美しいと評判が高まっている。

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